イオニアは犬派、カルメはペンギン派

「だから! この子は将来もっとおっきくなっていずれジェヴォーダンの獣になるんです!」
「はあ……このわんちゃんが」
「わんちゃんじゃないです! この子の名前はウルファンです!!」

 突如現れた依頼人はもっふもふの丸っこい犬を胸に抱きながら熱弁している。応対しているカル兄は依頼人のあまりの暑苦しさに辟易しているようで、ただでさえ低いテンションがさらに下がっている。俺はそんなカル兄に少しだけ同情を覚えつつも、客人へコーヒーをお出ししたタイミングでちらりとわんこを盗み見た。うん、かわいい。

 ウルファンくん(もしくはちゃん)は少しお年を召した小柄な貴婦人の腕に抱えられて、おとなしくふんふんと鼻を鳴らしていた。どこからどう見ても、ただのかわいいわんこ。サイズ的にはまだ仔犬だろうか。特筆すべき特徴といえば、毛色が赤みがかった茶色であるところくらい。

 後で触らせてもらおうかな、なんて呑気なことを考えていると、困り果てたカル兄は依頼人を帰らせるフェーズに入ったようだ。まあカル兄はあまり犬猫が得意じゃないから、リードも付いていないわんちゃんを探偵所に入らせておくのが気になるのだろう。

「とりあえず、その、『ジェヴォーダンの獣』? とかいう魔物についてはこちらで調べておきますから。お名前と連絡先だけ教えていただけますか」
「あら失礼、名乗りが遅れてしまいましたね。わたくしはジェーンと申します。連絡先は——」

 カル兄がつらつらとメモを取っている間、手持無沙汰になった俺は自分用に淹れた出がらしのコーヒーを啜る。ふと視界の隅できらりと鋭いものが光った気がして周りを見渡したが、くああとあくびをして眠そうな顔をしたわんちゃんと目が合っただけであった。

〈了……?〉

【ガチャ結果】
No.2546 将来
No.9840 ジェヴォーダンの獣
No.43 犬

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