【幕間3:ハーピーとセイレーン】

「そういや、コンレイさんはベリルさんがセイレーンだってことをいつ知ったの?」

 プラシオとベリルのファーストコンタクトが臨海公園である以上、彼女がプラシオに正体を隠しきるのは不可能に近いだろう。しかしセイレーンが未だに根強い差別を受けている種族である以上、他の種族には極力自らの正体を隠したがるのではないか? そんな疑問をもったイオニアは、岩陰からの覗き途中にずばりコンレイへ問いかけた。

「そうですねぇ、会った瞬間何となくわかりましたよ」
「え。なんで?」
「ハーピーとセイレーンって種族的には全くつながりがないんですが、身体の特徴や魔力の質が何となく似てるんです。例えるなら、イモリとヤモリみたいな感じですね」
「うーん、分かり易いようでよくわからない喩え」
「まあそんな感じで、わたしたちハーピーは変身魔法で擬態したセイレーンを見ると何となくわかっちゃうんです。『この子、姿は違うけどほんとは同族かな!? いやちょっと違う、セイレーンのほうだ!』って」
「へ、へえ……」

 人間であるイオニアには全く分からない感覚であるが、彼女らの中では割とポピュラーな感覚らしい。
「たぶんカルメくんも、こういったハーピーとセイレーンの関係性を知ってたからわたしにベリルちゃんのことを聞いてきたんでしょうね」
「ふうん。そういうことだったのかぁ」
 イオニアが感心しかけたその時、いきなりコンレイが彼の背中をばさばさと叩く。

「あっ、見てくださいイオニアくん! あの子たちキスしそうですよ!」
「えっ、どこどこ!? うわっ、プラシオさんたらやるなー!」
 傍らで無我の境地に達しているカルメをほっぽって、尚も覗きを続けるイオニアたちであった。